普通デザインてなんだ?と問われたら、「色や形や配置に美的な工夫をすること」だと答える人は多いかもしれない。
だから、デザインには個人のセンスや、美的感性がすごく重要で、デザイナーはちょっと特別・・
とはいわないけれどカッコイイ、そんな仕事だと思う人もいるかもしれない。
だけどそれって根本的な部分では、本当はすごく、違う。
デザイン(Design)。なにはともあれこの言葉の意味を正しく考えてみよう。
まずは辞書。手元の広辞苑第5版によれば、
デザイン【design】
(1)下絵。素描。図案。
(2)意匠計画。生活に必要な製品を製作するにあたり,その材質・機能および美的造形性などの諸要素と,技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。
「建築ーー」「衣服をーーする」
となっている。ふむふむ。
(1)で指すものはいわば『出来上がったデザイン自体(表層)』を指す日本語。いわばこっちは狭義のデザイン。
では(2)は?良ーく読むとここにヒントがあるように思える。
『要求を検討・調整する総合的造形計画』そう書いてある。
要するにデザインは要求を検討・調整して、全体を計画設計し、造形することだということ。
デザインの本質は、実はこちらで、ここの上に(1)の狭義のデザインが乗っかってくる。
ちょっと専門的な分野だけれども、ななまるがその昔専攻していたものに記号学と言うものがある。
ものすごーくざっくり説明すると、「記号」というのは世の中にあるもので特定の意味を内包するものを指す。
言葉はもちろん、絵や、シンボルや、ジェスチャーなんかもそう。実はデザインも、そう。
で、記号学大辞典と言うものがあるのだけど、それによれば、
Designの語源のラテン語Designareは、de+signであり(deは,from, out of, descended from, derived from, concerning, because of, according to, in imitation of, などの意味)、
記号を表出する行為、表出された記号自体、対象や意味を明確に示す行為、他との境界を限定して形状をはっきり示す行為、対象や意味に相当する代理物を用意すること、複写や記述、表示する要素の選択、
特定の対象や意味に他者の注意を向ける作為、感覚器官で捉えられうる刺激の集合によって対象や意味を代替えする行為、をさす。
となっている。なんだかようわからん、難しげな言葉が並んでるけど要するに、
『表出された記号自体=出来上がったデザイン自体(表層)』を指す狭義のデザインの意味の他に、
『目的を達成するために、人間の感覚に理にかなった方法で記号(=対象や意味を指し示すもの)を計画し,創造する行為。』
が記号学的デザインの定義であるということになる。
こうやってみると広辞苑も、記号学大辞典もまた、自分で見てほしいけどWikipediaも同じことを言っていることがわかる。
デザインの意味は決して、「表層を飾り立てる事」ではなく、
「色や形や配置に美的な工夫をすること」も目的があってこその二次的な行為にすぎない。
私は個人的にデザイナーにとって文系、理系、あるいは芸術系(これは一般的には文系とされるよね?)
という分類は無意味だと思うのだけれど、その理由はここまで見たらわかるんじゃないかな。
設計と言う言葉は主に工学系で使われて、デザインと言う言葉は主に文系で使われる。
だけどどちらもほとんど同じことなのだから。Webのデザインなんかはまさに「設計!」という感じだし。
設計なのだから、それは論理的な思考技術だと言うことが出来る。
デザインは設計。では何を設計するのかと言えば、それは伝えるべき情報と誘導するべきアクション。
情報を整理し、価値の再整理をし、再構築して視覚化する技術を駆使する人をデザイナーという。
そうであれば、デザインのよりどころはまず、
個人の「センス」や「美的感性」にあるのではなく(もちろんそれらだって重要だけど)、
人がものを感じるメカニズムや意味を読み取るメカニズムに基づいた適切な視覚化の方法を知ることにある
と言うのがわかるのではないだろうか?
でも結局感性だって大事だよね?の話