脳は美をいかに感じるか
うわー、気づかないうちに7月が終わりそうとか、何!?
何事!?何がおこってるの!?タイムワープ(違)?
…ええ、忙しさにかまけて更新もしておりません。ごめんなさい。
最近は仕事→就寝→仕事→就寝のループだったので、
あまり何も読んでもいなけりゃ見てもいませんよ!
というわけで、今日は脳科学+美術の奇跡のコラボレーション(?)
痺れるマイバイブルをご紹介。
この前書いたポール・エクマン博士といい、このセミール・ゼキ博士といい、
実際の何事かの事象を自分の持っている科学的知識のアプローチで
読み取ろうとするおかしな(?)人たちっておもしろいですよねえ。
科学はとかく机上の空論になりがちだけれど、(特に私のような一般ピーポーには)
少しでも現実の事象に照らして考えてみるというアプローチは面白いなあといつも思う。
科学はそうあらねばならないよなあと、いつも思う。
とはいえですよ、この本を読むと、美のもたらす感動体験そのものの原理が
解明できてるかというととてもそこまでは、やっぱりとても無理。
感動という情緒活動自体がまだ良く分かってないんだからそりゃそうだけど。
——- 本書では主に「美術作品の知覚」について扱うが、
筆者はかねてから美術のもっとも慈しまれ、喜ばれている側面、
すなわち美的魅力、感動を呼び起こす力、心をかき乱し、刺激する力について
何か一言でも言うことができたらと思い続けてきた。
現在はまだとてもそのような状況にはないが、いずれそうなるものと強く期待している。——-
(P196)
と書かれているように、美術、すなわち視覚刺激がもたらす感情を解明する
ホントの最初の一歩しか脳科学自体はいけてないわけだけれど、これがねえ、面白かった。
具体的には一番最初の視覚情報を受け取る大脳視覚野の話がほとんどだけれど、
この辺の原理が分かるだけで、「あ、だから、この色の組合せは綺麗と思うわけね」とか
「あの意味不明のピカソとかカンディンスキーの絵はどこがすごいのか」とか
わかる。これはすごい事じゃないかと思う。
要するに、その原理がこうなっているという事ではなくて、
それを美術の世界に持ち込んでみたゼキ博士のアプローチが、目新しい。
「感動」にまつわるものってなにか、科学的なアプローチを拒むような
なんだろ、「考えるな!感じろ!」的な神秘的なタブー性みたいなものがあると思うんだけど、
(多分これって論理的に完全解明されると洗脳的な意味でも色々危険だからだと思うので、
そのへんの自己防衛本能が働いている気がしないこともない。)
脳科学は人間そのものを解明するために日々進歩している訳で、
人間活動の中でも特殊なもの=「感動」を目的とする活動を解明するには
絶好のアプローチかもしれないなとは思っております。是非はともかく。
わたしは大学で美術論をやってたけど、そのころから変だな変だな思っている。
なんで、美術なんてあるんだろう。音楽や、文学も、なんであるんだろう。
なんで、優れた美を、人間はそういうものの中に見るんだろう。
生きていくための直接的な活動でもなく、種の持続のための活動でもない
こういう特殊活動が、不思議でしかたない。
すごく魅力的で決してなくならないのに、でも生物学的には不必要。
その存在の理由そのものを知りたいという私みたいな人には
なんかインスピレーションを与えてくれる本かもしれません。